診療項目

尿路感染症

尿路感染症とは?

尿路に、バイ菌(細菌・ウイルス・真菌などの微生物)が入って(感染)、引き起こされた病気のことを言います。

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尿路とは?

文字通り、尿(おしっこ)が通る路(みち)です。
尿は、左右2つの腎臓で、血液を濾してつくられ、それぞれ左右の腎盂→尿管を通って膀胱へたまります。膀胱へ尿がある程度たまると、尿意を感じ(おしっこがしたくなって)、尿が膀胱から尿道を通って体の外へ出されます。
この、腎臓→腎盂→尿管→膀胱→尿道を尿路と呼びます。
特に腎臓・腎盂・尿管を上部尿路、膀胱・尿道を下部尿路と呼ぶことがあります。

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尿路感染症にはどんな種類があるの?

さまざまな分類があります。

・バイ菌が感染してから発症するまでの期間によって、
  ①急性 ②慢性に分けられます。

・感染症のもとになる病気を持っているかどうかで、
  持っていない場合①単純性、持っている場合②複雑性に分けられます。

・感染した場所により、
  腎盂腎炎、膀胱炎などに分けられます。

※尿道炎は性行為によって感染することがほとんどであり、性感染症(STD)に含まれるため、当ホームページの別項をご参照下さい。

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複雑性感染症の原因となる病気にはどのようなものがあるの?

先天性のもの(うまれつきの病気)と、後天性のもの(成長してから発症した病気)があります。

  1. 膀胱尿管逆流(VUR)
    おしっこを出す時、尿は膀胱から尿管へは通常逆流しません。しかし膀胱尿管のつなぎ目に異常があると、膀胱に入ったバイ菌が、尿管→腎臓へとあがっていくことで、腎盂腎炎などの尿路感染症にかかりやすくなってしまいます。乳児のVURは、軽度であれば成長するにしたがい自然に治る可能性があります。

  2. 重複腎盂尿管
    ひとつの腎臓に対して、腎盂・尿管が2組以上存在する先天奇形です。VURや水腎症を合併していることが多いです。

  3. 尿管狭窄
    腎盂尿管移行部(腎盂と尿管の境目)や尿管に狭窄・閉塞があると、尿の流れがよどんでしまいます。よどんだところはバイ菌がたまりやすく、感染が起きやすくなってしまいます。 原因としては、腎盂尿管移行部狭窄・尿管腫瘍・子宮癌や大腸癌、癌のリンパ節転移巣などが広がって尿管のまわりを圧迫してしまうことなどがあります。

  4. 神経因性膀胱
    文字通り、脳神経系の病気により引き起こされた、膀胱のはたらきの障害です。脳の病気(脳梗塞・脳腫瘍・多発性硬化症など各種)や、脊髄の病気(脊髄腫瘍・椎間板ヘルニアなど)、二分脊椎症、糖尿病による神経障害などのために、おしっこを出そうとしても膀胱の筋肉がしまらないために、膀胱の袋にたまったおしっこが体の外に出せなくなります。膀胱におしっこがたくさんたまってしまうと、膀胱の中の圧力が異常に高くなり、結果としてVUR・水腎症などを引き起こします。また、膀胱内に尿がたくさん残る(残尿が多い)と、流れがよどみ、感染の原因となってしまいます。膀胱結石・膀胱憩室などを併発することもあります。

  5. 水腎症・水尿管
    VURや尿管狭窄のため、腎盂から尿管に尿がたまって拡張している状態です。尿の流れがよどんでしまうため、バイ菌がつきやすく、感染を起こしやすいだけでなく、高度になると腎臓の働きにも障害を及ぼす可能性があります。原因としては、上記のようなVUR・尿管狭窄はもちろん、腎結石・尿管結石・前立腺肥大症・浸潤性(広がって進行した)膀胱癌・神経因性膀胱などがあげられます。

尿路の病気以外に、糖尿病や高齢者、抗ガン剤や免疫抑制剤などが投与されている患者さんは、抵抗力が弱いため、感染症にかかりやすい傾向があります。

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どんな症状がでるの?

  • おしっこが近くなり、何度もトイレに行くようになる(←膀胱炎)
  • おなかの下のほうが痛い。
  • おしっこをした時やした後に痛みがでたり、しみたりする。
  • おしっこをした後も尿が残っている感じがする(残尿感)。
  • 高い熱が出る(←腎盂腎炎)、場合によっては、寒気が起きたり、ぶるぶる震えがきたり(悪寒・ 戦慄)、頭痛や関節痛などが起きたりする。
  • 左右どちらかの背中が痛くなったり、重い感じがしたりする(←腎盂腎炎)
  • 血尿やにごった尿(混濁尿)がでる。

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どんな検査でわかるの?

バイタルサイン

腎盂腎炎では、高熱(38℃以上)がでることがあります。バイ菌によるショック(敗血症性ショック)では、血圧が下がってしまうこともあり、命が危険なこともあります。

理学的検査

腎盂腎炎では左右で、炎症が起こっているほうの背中をたたくと、痛みが体に響くことがあります(CVA tenderness陽性)。また、膀胱炎では、下腹部を押すと違和感や鈍痛が生じることがあります。

尿検査

  1. 尿定性…白血球反応陽性。
  2. 尿沈渣…白血球を多数認め、細菌を認めることもあります。白血球は侵入したバイ菌に対抗するために体の中から動員されたものです。
  3. 細菌検査…尿の培養で、原因となる細菌(起因菌)を分離培養します(尿培養)。(一部、通常の培養では検出されにくいものもあります)。同時に薬剤感受性検査を行うことで、有効な抗菌薬(抗生物質)を調べることができ、治療に有用です。

血液検査

  1. 腎盂腎炎などで、高熱となった場合、白血球やCRPなどの炎症マーカーの数値が上昇します。
  2. 腎盂腎炎などでは、血液の培養をとると(血液培養)、バイ菌が分離培養されることがあります。

画像検査

(おもに複雑性感染症の原因を調べるために行われます)

  1. 排尿時膀胱造影…腎盂腎炎を繰り返す場合などは、VURが疑われることがあり、その有無をチェックすることが重要です。膀胱内に造影剤という薬を注射し、患者さんにおしっこをしてもらいながら、レントゲン撮影を行うと、膀胱尿管逆流の有無がわかります。
  2. 経静脈的腎盂造影(IVP・DIP)…静脈に造影剤を注射し、レントゲン撮影を行うと、尿中に出された造影剤が白く映り、腎臓・腎盂・尿管・膀胱までの形状を見ることができます。水腎症・尿管狭窄・排尿直後にも撮影を行うと、VURがわかることがあり、排尿時膀胱造影の代わりになることがあります。

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原因となるバイ菌にはどのようなものがありますか?

腸内細菌が多数を占めます。
大腸菌が80%を占め、プロテウス・肺炎桿菌などといったものも含めると、グラム陰性桿菌という 細菌の仲間が、90%を占めます。

複雑性感染症の場合、腸球菌などのグラム陽性菌や、緑膿菌などの弱毒菌の頻度が上昇します。

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膀胱炎について

原因

膀胱炎は女性がほとんどで、男性に発症した場合は、なんらかの基礎疾患を持っていることがほとんどです(複雑性)。女性は男性と異なり、尿道が短く、おしっこの出口の近くに腟や肛門などがあるため、バイ菌が容易に入り込んでしまいます。
性行為などで感染することもまれではないため、比較的若年者に多く認められます。閉経前後の中高年にも認められることが多いです。

症状

  • おしっこが近くなり、何度もトイレに行くようになる。
  • おなかの下のほうが痛い。
  • おしっこをした時に痛みがでたり、しみたりする。
  • おしっこをした後も尿が残っている感じがする(残尿感)。
  • 血尿や混濁尿がでる。

治療

安静・水分補給をおこない、たくさんおしっこをすることで、尿と一緒に膀胱にたまったバイ菌を体の外に出します。熱がでることはまれであり、抗菌薬の内服を3~7日間投与することで改善することが多いです。

腎盂腎炎に移行することがあります。

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腎盂腎炎について

原因

VUR・尿管狭窄・水腎症(上記各項目を参照してください)などにより、腎盂・腎臓にバイ菌が入りこむことにより感染症・炎症を起こします。
症状などが出ずに長期間放置しておくと、腎臓が障害を受け、腎臓全体に膿がたまってしまうこともあります(膿腎症)。この場合、管を入れてウミを体の外に出したり(ドレナージ)、最悪手術により腎臓を取ってウミをださなければならないこともあります。

症状

  • 熱が出て、だるい感じがする。ときに寒気がきて、体が震える。
  • 背中や脇腹が痛くなり、重い感じがする。
  • 腎盂腎炎の症状より先に、膀胱炎の症状が起こることがある(膀胱に入ったバイ菌が尿管を通って腎臓へ行く(逆行性感染)ことが多いため)

治療

重症、小児・高齢者では原則入院が必要です。熱が出たり汗をかいたりすることで脱水となりやすいため、十分に輸液を行い、水分補給する必要があります。安静も大切です。

軽症・中等症の場合…抗菌薬の内服で治療可能な場合が多いです。2週間ほどの内服が必要ですが、重症化した場合は入院治療が必要です。

重症の場合…重症とは、高熱・血液検査にて白血球・CRPの値が高い・嘔吐などによる脱水が著明・ショックの可能性がある場合です。入院の上、輸液および抗生物質(抗菌薬)の点滴が必要になります。3~5日間抗生剤の点滴を行い、解熱されれば内服薬に変更し、計2週間ほど治療します。

尿路閉塞が原因の場合、ときに膀胱から腎臓へ尿管ステントという、腎臓でできたおしっこを膀胱に運ぶ管を入れたり、重症の場合は背中から腎臓へ管を入れて直接おしっこを体の外に出す(腎瘻(じんろう))処置を行ったりしなければならないことがあります。

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治療にあたって

安静・水分補給・おしっこをたくさん出すことが重要です。尿を出すことで、いっしょにバイ菌も体の外に出ていきます。

複雑性尿路感染症の場合、原因となる病気を改善しなければ、感染を繰り返すことが多く、原因疾患の治療が必要です。

抗菌薬(抗生物質)は、尿培養や血液培養の、薬剤感受性の結果が出しだい、効果のある薬剤に変更が必要となることがあります。

抗菌薬にはさまざまな系統がありますが、一部妊婦などに投与してはならない薬があり、注意が必要です。

重症の場合、ショックとなり命にかかわる状況になってしまうこともあり、油断できず、注意が必要です。

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