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泌尿器のがんへの取り組み

泌尿器のがん

当院では泌尿器のがんに対して、次のようなことを心がけております。
1)がんをすべて取り除くこと(根治性)が最も大事なことですが、
それとともに、
2)患者さんの身体に優しい手術(低侵襲手術)であること。
3)手術後にできるだけ快適に暮らせること(生活の質 クオリティ・オブ・ライフの向上)を心におきながら手術治療にあたるように心がけています。

1.当院の手術症例数が多い理由

当院は泌尿器科単科の病院としてはわが国で最多の99床を有し、1日平均外来患者数約200名、年間約9,500例の新患患者さんが受診されています。他院からの紹介患者さんも多く、このようなことから泌尿器科のがん治療の症例数が多い理由となっています。また当院は、日本がん治療認定医機構認定研修施設に認定されています。手術は、技術的に熟練した、泌尿器科指導医・専門医が行なっております。手術症例数が多いため、術者は充分な経験を有しており、より高い技術で手術が行なえるものと考えています。そのため、当院では手術時間が、より短時間で行なわれ、このことは患者さんの身体に優しい低侵襲手術に結びつくものと考えています。

当院では、泌尿器がん全般の治療を行なっていますが、特に前立腺がん、膀胱がん、腎がん、腎盂尿管がんの手術治療に力を入れて取り組んでいます。腎がん、腎盂尿管がんに関しては腹腔鏡手術も取り入れております。

2.前立腺がん・膀胱がんの手術の特徴

前立腺がんに関しては、前立腺全摘術は全国でも上位の手術例数を行なっています。現在前立腺全摘は1時間から1時間半で手術が終了します。短時間での手術は、それだけ患者さんへの身体の負担が少なくなり、また一般的に出血量なども少なくなります(低侵襲)。当院ではがんをすべて取り除くこと(根治性)を重視することは当然ですが、前立腺全摘の合併症である、術後の一時的尿失禁、勃起不全の頻度を少しでも減らし、またできるだけ短期間で手術前の状態に戻れるよう、日々努力を重ねています。そのために患者さんの排尿状態や、性機能などに関しての質問紙を手術前、手術後定期的に行い、患者さんからは言い出しにくい症状を把握し、適切な治療を行なうようにしています。また手術後の性機能の問題に関しては、当院では性機能の専門外来があり、勃起改善薬(バイアグラ・レビトラ・シアリスなど)のほかにも、注射による治療なども行なっています。

性機能外来では、他の施設で前立腺の手術をされた方も治療を受けに来ています。

膀胱がんの手術では、通常経尿道的に内視鏡による膀胱腫瘍の切除が行なわれます(昨年1年間132例)。表在性の腫瘍では、経尿道的切除により、腫瘍を取りきることも可能です。しかし表在性の膀胱腫瘍においても、膀胱を中心に再発が起こりやすく、膀胱内に抗がん剤注入を行なったり、定期的な膀胱鏡検査が必要です。
膀胱腫瘍の根が深い場合(侵潤性)や、多発性で内視鏡的手術ではとりきれない場合など、膀胱全体を摘出する手術(膀胱全摘)が行なわれます。この手術では、膀胱という、尿を溜め、排出する臓器がなくなってしまうため、尿の出口を新たに作らなければなりません(尿路変更)。尿路変更の方法として尿管や小腸を用いて導管を造り、皮膚にストーマとして出す方法が最も多く行なわれています。これらの尿路変更は手術後の生活に大きな影響を与えるため、尿路変更手術に伴う手術による侵襲性や手術以後のいろいろな管理なども考慮し、自分にあった方法を選択することが大切です。

3.腎臓がん・腎盂尿管がんの手術

腎臓がん・腎盂尿管がんの手術に対して、腹腔鏡下手術を2002年より取り入れております。
手術には、泌尿器腹腔鏡技術認定医が必ず参加します。腹腔鏡下手術は、小さな穴から内視鏡などの器具を入れ手術を行いますので開腹手術より傷が小さく、術後の痛みも少ない利点があります。しかし腫瘍が大きい場合や、癒着が予想される場合には、開腹手術が安全な場合もあります。

4.治療・病状の説明

患者さんや家族の方が、病状・治療方針に充分納得されたうえで、手術・治療を受けていただきたいと考えています。そのため患者さん家族の方と、まず病状や患者さんの状況(年齢など)を考慮しながら手術や薬物・放射線療法などの治療法を充分相談してゆきます。そして,手術が選択された場合には、手術の担当医が、病状や手術内容、起こりうる合併症について、絵や模型を使いながら、充分な時間をかけて説明するようにしています。手術につき理解していただく事は、非常にその後の治療を進めてゆく上でも重要なことと考えています。

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